いつまでグダグダ寝ているのです。
さっさと身支度をしないと遅刻しますよ。
どうせ起きているのでしょう、たぬき寝入りはわかっているのですよ?
──いいですか?
貴女が遅刻しようと、そのせいで誰かに叱られようと、まぁ、私は別段、構いはしませんがねぇ。
せっかくの朝餉(あさげ)が冷めてしまうのは、もったいないとは思いませんか?

今日をよい一日にするためには、
「朝餉(あさげ)をキッチリ腹に入れること」
が、基本中基本だと、何度も教えて差し上げたはずですよ?
三歩歩けば忘れるトリ頭ですか、貴女は。

──間──

ほぅ、まだ無視しますか・・・・・・いい度胸です。
そうですねぇ・・・・・・。
貴女が寝ていると無言の主張をするのならば、こちらにも考えがありますよ、ふふふっ。
閨(ねや)の相手が、無反応な人形ではつまりませんが・・・・・・。
たまには新鮮かもしれませんしねぇ。

──間──

ふっ、戯言(ざれごと)に決まっているでしょう。
私はあちらの美女、こちらの美女と引き手あまたなのですよ?
誰が、乳臭い貧相な貴女を相手にしようと思いますか?
・・・・・・っ、・・・・・・泣いているのですか?
まぁ、乳臭いは言い過ぎだったと思いますが・・・・・・。
貧相は的確な表現だったと・・・・・・えぇっ!?
こうなったら一生、布団のなかで暮らしてやる!?
お待ちなさい、元はと言えば、貴女が毎朝、寝坊するのがいけないのですよ?
最近、私と寝所が別になったから、さみしくてよく眠れなくなった・・・・・・ですか?
それは、前にも説明したはずですよ?
夫婦(めおと)でも、兄妹でもないのですから、いつまでも布団を並べているわけには・・・・・・。

──間──

あぁ〜、はいはい、わかりました。
今夜から、さっそく川の字で仲よく眠りましょう。
はいはい、だからって、貴女に手は出しませんよ。
・・・・・・ぇ、他の女性達との交際解消については、今は了承しかねますが・・・・・・わかりました、善処してあげましょう。
まったく世話の焼けるお子様ですよ、貴女は。
それが嫌でないのだから、惚れた弱味ですかねぇ。

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